「子どもの就職、親も一緒に考える」
2024年12月、くにびきメッセで保護者向け就活セミナーを開催し、入社1年~3年目の県内企業に就職した若手社員3名の、「今の職場に就職を決めた理由とやりがい」や、「仕事面とプライベート面で県内就職して良かったこと」、「就職活動で困ったこと」、「保護者からの嬉しかった、嫌だった言葉や行動」など、普段は聞けないホンネにせまりました。
今の子ども世代の就職活動は、親世代の頃とは全く異なってきています。また、地元就職することに対しての考えや、仕事のやりがい、企業選びの基準についても、時代に合わせて変化しています。
若手社員の“ホンネ”を参考に、島根での就職について、お子さんと一緒に話してみませんか?
今の職場に就職を決めた理由と
やりがいは?
株式会社アトラス
(松江市)
福田 亮太 さん
入社1年目/
岡山県からUターン
松江市出身
福田 福利厚生と助け合いで働きやすい職場
アトラスは建設コンサルタントの会社で、就活段階では営業手当、住宅手当など福利厚生が充実しているのが魅力でした。現在は営業として見積の作成や入札業務などを担当しています。まだ入社1年目で模索中の段階ですが、当初は分からない言葉だらけ、右も左もわからない状態だったのが、先輩方の指導や日々の業務、同業他社との合同新人研修などを通じて「成長している」と自ら感じられる瞬間にやりがいを感じています。社内外の交流が多く、良い環境で仕事ができています。
和田 少しずつ新しい業務を任せてもらえる
大学から大学院の6年間学んだ金属・材料工学の仕事がしたいと考え、「島根の企業」「金属を扱うメーカー」「長く働けそうな雰囲気」の3点を軸に就活を進めました。守谷刃物研究所は国内外に顧客がある金属加工メーカーで、入社後はモーター部品・積層モーターコア製造工程などでものづくりに携わっています。徐々に高度な技術が必要な工程にステップアップし「少しずつレベルアップしている」「技術力が上がっている」と実感できるのが1番のやりがいです。
井手 子どもたちの健康づくりに携わる
栄養士としての就職先は病院や老人施設などの選択肢もありましたが、子どもが好きなので保育園や幼稚園が希望でした。今は法人内の「ながさわ子ども園」で給食やおやつの調理、献立作成などを担当しています。栄養素を考えて献立を作成したり、食育活動で食に対する興味を引き出したり、子どもたちの健康に寄り添う仕事です。「給食で苦手なものが食べれるようになった」など子どもたちからの言葉が何よりうれしく、子どもたちとの関わりの中でたくさんのやりがいや楽しさを感じる日々です。
仕事面とプライベート面で
県内就職して良かったことは?
株式会社守谷刃物研究所(安来市)
和田 涼弥 さん
入社2年目/
福岡県からUターン
大田市出身
福田 研修で人脈が広がり、仕事とプライベートが充実
3カ月間の新入社員研修は同業他社の20人が合同で受け、親しくなった人たちとはプライベートでも付き合いが続いてます。とくに共通の趣味の筋トレ仲間は、休みの日に一緒にトレーニングしたり、食事に行ったり、公私で人脈が広がりました。
和田 海や山が近くにあり落ち着く
福岡にも海や山はありますが、やはり地元の三瓶山に行くと「いいな」と思えるし、進学で離れたことで魅力が深く見えるようになった気がします。キャンプ場でのたき火が趣味で、職場のある安来に中海を一望できるきれいな景色のキャンプ場があって、気に入っています。
井手 家族が近くにいることの安心感
一番は家族が近くにいる安心感です。仕事で疲れて家に帰ってきた時に、温かいご飯があったり、家事をサポートしてもらえたり、実家での生活や親のありがたさを再認識しました。地元の友人たちもリフレッシュできる存在です。
就職活動で困ったことは?
社会福祉法人誠和会
(浜田市)
井手 遼花 さん
入社3年目/
岡山県からUターン
浜田市出身
福田 地元企業を探す手段が限られて不安
大学時代はコロナ禍で、島根企業の情報収集は冊子やネットを活用しました。その過程で当社を知りました。本格的な就活時期は対面企業説明会も始まり、積極的に参加するようにしました。実際に自分で足を運び、企業の方の説明や思いを直接聞いたことが「ここだ」という一番の決め手になりました。
和田 島根に就職している人が少なくて情報収集が大変
大学のキャリアセンターでは大学OBの島根就職例が少なく、経験談を聞く機会はありませんでした。ただ、そこにジョブカフェしまねの冊子があり、情報収集に大いに役立ちました。就活はオンラインの説明会やインターンシップを活用し、興味を持った企業は訪問する形で進めました。
井手 島根に戻ってこれず、見学ができなかった
コロナ禍での就活では移動の制限や待機期間もあり、長期間滞在することもできなかったので、島根県内に帰省して保育園等を見学することはできませんでした。不安はありましたが、「島根で就職しよう」という気持ちで就活を進めていましたので、迷いはありませんでした。
保護者からの嬉しかった、
嫌だった言葉や行動は?
福田 親の助言で地元就職への道を決意
大学1年生の冬、急に父から「お前、就職どうする?」と聞かれました。まだ全然考えてない時期でしたが、そこから少しずつ意識するようになり、情報収集するようになりました。岡山で就職するか、島根に戻るか、正直すごく悩み、就活前に相談した時は「自分の好きなところに行きなさい」とだけ。島根県外も含め30社ぐらい訪問し、納得するまで就活したことで、最終的に「島根が好きだ」と思えたことも大きな決め手でした。
和田 嬉しいのと困惑 (嬉)就活のチラシを送ってくれた(困)意見が変わった時は困惑
「都会よりは地方」と考えていましたが、当初島根に帰るつもりはありませんでした。変わったきっかけは、秋田に工場がある企業パンフレットを実家で見ていたときの母の言葉「秋田に行くなら、島根に帰ってきて」。島根県内の就活のチラシや資料を送ってくれて、その支援はすごくありがたかったですね。一方で、島根の就活を始めた後の父からの問いかけ「やっぱり都会の大きい企業が安心じゃないか」には、親心からの言葉と感じましたが、多少困惑しました。
井手 安心する言葉をかけてくれた
今の職場の試験を受け、合否通知が届くまでの1カ月間は不安な気持ちで過ごしましたが、「落ちても家はあるし、ご飯もあるから」「したい仕事が見つかるまで、ゆっくり考えればいい」という母の言葉が支えになりました。大学選びも「好きにしたらいい」と言ってくれて、戻ってきてほしいと言われたこともなく、いつも私の意志を尊重してもらえたことがうれしかったです。実際にUターンすると、とても嬉しそうで。島根で就職してよかったと思います。
最後にひとこと
保護者&就活を控えた
お子さんたちへメッセージを!
福田 自分自身、何がしたいのか、正直あまりよく分からなかったんです。最初はいくつもの選択肢があって、そこからどんどん動いて、フォーカスを絞っていきました。たくさんの選択肢から自分の好きなものを選びとってほしいと思います。
和田 自分の就活体験からアドバイスできるのは「その企業を100%知った上で就職をすることは不可能だ」ということ。全ての希望を満たす企業を探すのは難しいので、「何を1番に優先するか」をきちんと持って取り組んでほしいと思います。
井手 就活中は悩んだり、決めないといけない場面が多く、いろいろと悩む場面も多かったのですが、友人や家族に相談したり、自分の気持ちや直感を1番大切にして頑張ってほしいと思います。応援しています。
― 保護者の方が何よりの応援者であり、力になる存在であることがとても伝わってきました。ぜひ皆様もそういう立場として、お子さんの背中を押してあげていただけたらと思います。「今日こんな話聞いてきたよ」と県内就職について一緒に考える機会をぜひお持ちいただければ幸いです。
セミナーに参加された保護者の声
50代 女性
子どもが広島県内へ進学
マイナビの就活セミナーを通じて、現在の就職活動の実態についての理解が深まりました。特に新人社員3名のパネルディスカッションでは、普段聞けない率直な体験談や考えを共有していただき、現代の学生の視点を知ることができました。
就職活動は長期間に及ぶ大変な過程ですが、子どもたちの職業選択を尊重しながら、親としてどのようにサポートすべきかが明確になりました。新人社員の方々の経験談は、ぜひ就活中の子どもにも伝えたいと思える貴重な情報でした。
50代 男性
子どもが東京都内へ進学
パネラーの構成が入社1年目、2年目、3年目と経験年数に幅があったことで、様々な視点からの意見を聞くことができました。特に、これまでとは全く異なる未知の世界に飛び込んで就職された方のお話は大変参考になり、子どもが就職を考えている企業の名前を私たち親が聞いたことない企業名だったとしても、企業に対して先入観を持って見るべきではないこと、視野を狭めてはいけないことを改めて認識させられました。
本当に聞きたかった、参考になるテーマについてたっぷりとお話を聞くことができ、大変充実した時間となりました。子どもがいつでも相談できる親としての気もちの準備をしておきたいと思いました。