高校生の保護者向け就活セミナー

「子どもの就職、親も一緒に考える」

2022年12月、くにびきメッセで保護者向け就活セミナーを開催し、入社1年~3年目の県内企業に就職した若手社員4名の、「県内就職した理由」、「地元就職のメリット」、「親はどのように関わればいい?」など、普段は聞けないホンネにせまりました。
今の子ども世代の就職活動は、コロナ禍ということもあり、親世代の頃とは全く異なってきています。また、地元就職することに対しての考えや、仕事のやりがい、企業選びの基準についても、時代に合わせて変化しています。
若手社員の“ホンネ”を参考に、島根での就職について、お子さんと一緒に話してみませんか?

パネルディスカッションで登壇した若手社員の皆さん

今の職場を選んだ決め手は?

Uターン「安心感」/
Iターン「自然が魅力」

株式会社ミック

倉立 陽花くらたて ようか さん

入社2年目/広島県からUターン
松江市出身

倉立 高校、大学で学んだ情報系の仕事がしたいと考えていました。ミックは地元での知名度が高く、地域密着の社風に魅力を感じました。職種はCSE(カスタマーシステムエンジニア)で、オフィスの複合機やPCなどICT関連機器の保守メンテナンスを担当しています。エンジニアの中でも特に顧客に近い立場で活動する仕事。地元の役に立ちたいという思いがあり、企業に不可欠なICT環境をサポートする仕事はぴったりだと感じました。

雄副 生まれ育った出雲、島根の発展に貢献できる仕事をしたいと考えながら就活を進めていました。島根中央信用金庫は県内唯一の出雲市に本店を構える地域密着型の金融機関で、研修プログラムも充実し、若手でも多様な業務経験ができることが魅力でした。自宅から通勤でき、ライフプランがイメージしやすかったのもポイント。1年目で窓口、2年目で営業を経験し、現在は融資業務を担当しています。繁忙期もありますが、ライフ・ワーク・バランスを考慮した働き方ができています。地元就職は親孝行になるとも考えていました。

川瀬 大学時代に地域課題や活性化を研究するなかで、島根の課題解決に取り組みたいと考えるようになりUターン就職を決めました。IT分野の新技術に興味があり、自治体や医療機関など幅広くソリューション開発を行っている業務が魅力でした。SE(システムエンジニア)として医療機関向けのシステム開発を担当しています。もともと文系でしたが、会社の研修体制が充実しているので不安はありませんでした。

伊賀上 島根県立大学浜田キャンパス(浜田市)を卒業後は、地元の愛媛に帰るか迷いましたが、浜田市にIターン就職しました。就活を始めても職種、就職地ともにイメージがわかないまま、大学の先輩から説明会のことを聞き、島根での就職に興味を持ちました。マルハマ食品は製造工程を実際に見学したことで、食を通じて幸せな食卓を支えたり、地域に貢献することにやりがいや楽しさを感じることができました。

県内就職して良かったことは?

「安心感」
「家族への感謝再認識」

島根中央信用金庫

雄副 貴裕おぞえ たかひろ さん

入庫3年目/兵庫県からUターン
出雲市出身

雄副 一番は家族からのサポート、安心感です。大学時代の一人暮らしを経て、あらためて親のありがたさを再認識しました。学生の時と比較し時間の自由度や優先順位が変わり、生活面のサポートや相談できる存在が身近にあることは大きく、感謝しかありません。地元の友人たちもリフレッシュできる存在です。

倉立 生まれ育ち、住み慣れた地元は両親や祖父母、友人たちとすぐに会え、安心して過ごせる環境で働けることです。お客様も温かく接していただき、島根県民の温かさを感じられるところも良かった点。買い物は広島が便利でしたが、ネットでも買えるし、お金を使い過ぎないので良いかもしれません。

川瀬 大学の4年間を過ごした大阪と比べて、電車やバスが空いていて、通勤のストレスが少ないです。反面、今は車を持っていないので、交通の便の悪さはストレスになることもあります。

伊賀上 大学時代から近くの海で釣りをしたり、冬はスノーボードと島根の自然豊かな環境で楽しめる趣味が増えました。星空もきれいで、一番感動したのは人生で初めて見た流れ星。就職後の変化はそれほど感じませんが、家事や生活面のスケジューリングは学生時代よりもきちんとできていると思います。キャンプにも興味があります。

具体的な就職活動を教えて!

コロナ「前後」の違いは?

株式会社テクノプロジェクト

川瀬 純菜かわせ じゅんな さん

入社1年目/大阪府からUターン
出雲市出身

Case1 コロナ禍2年目の2022年卒

川瀬 就活はオンラインがメインで、距離が障壁にならず、島根の企業にも気軽に応募できたと思います。就職した会社は説明会、一次面接、最終面接まですべてオンラインで、大阪から受けることができて負担感はありませんでした。オンラインのメリットを感じています。東京、大阪含め20社程度で、県内は現在の会社1社しか受けませんでした。就活は3年生の秋からで、早いところからは4年生の4月に内々定を受けました。島根企業の情報は主にジョブカフェを活用しました。

伊賀上 周囲に比べると積極的に活動できていたとは言えませんし、オンライン説明会にも苦戦しました。積極的に動けなかったのは、何をしたいか、どこで働きたいか、自分の中の軸がはっきりしていなかったのが一番の原因だと思います。実際に動き出したのは4年生の4月。内々定は7月。コロナ禍でも直接見学できた現在の会社に熱量を感じて、決めました。大学のキャリア支援が充実していて、企業情報も主に大学からのサポートが大きかったです。

Case2 新型コロナの影響を受けた最初の世代・2021年卒

倉立 就活が本格化する20年3月に大規模イベントの自粛要請が重なり、その後緊急事態宣言などで合同説明会中止が相次ぎ、オンラインに切り替わりました。焦りや不安の反面、「気になる企業の説明会はとにかく参加してみよう」と積極的に活動できたことはオンラインならではのメリットでした。やりたいことがはっきりせず、始動が4年生の2、3月頃と遅れたのが反省点。目指す企業が固まったのは5、6月頃。説明会は多数参加しましたが、実際に受けたのは3社で、7月に2社から内々定をいただきました。島根企業の情報は、ジョブカフェしまねから送られる冊子やネットを活用しました。

Case3 コロナ禍前の2020年卒

雄副 大学の先輩のアドバイスで早い段階でスタートしたことで順調に進められたと思います。たとえば3年生の夏に目指していた業界のインターンシップに参加し「この仕事は合わないかも」と気付くことができ、早期にいろいろと試せたのが良かったと思います。就活を通じて、これまで知らなかった業界や企業を知り、世界観や視野が広がったと感じます。自分の経験からも「何をやりたいかわからない」という人ほど早めに着手した方がいいと思います。コロナ前で各地を往来する就活は金銭面も含め大変な面もありましたが、スケジュール管理を学ぶ機会にもなりました。島根県の情報は、実家からジョブカフェしまねの企業一覧の冊子を送ってもらったり、ネットを活用しました。

「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」や

自己PRでアピールしたことは?


マルハマ食品株式会社

伊賀上 昴成いがうえ こうせい さん

入社1年目/愛媛県からIターン

伊賀上 大学の部活動、ゼミ活動をメインに話しました。

雄副 どこの企業でも出てくる質問で、企業としても学生時代を知るうえで重要な質問だと思います。大学に通いながら専門学校にも通っていたことをアピールしました。

倉立 大学1年生のとき休止していた同好会を友人らと復活させたエピソードをPRしました。

川瀬 部活やサークル活動はしていなかったですが、地域の活性化ビジネスを企画し提案する活動をしていて、そのエピソードを話しました。

就活中の保護者の言動はどんな感じ?


雄副 主に祖父母からは「地元に戻り就職してほしい」と言われましたが、父母からは地元就職のメリットや目先のことではなく、先のことを考えて就活すべきだとアドバイスをもらいました。地元に貢献したいという思いがあり、いったん県外就職してその後島根に戻るという選択肢もありましたが、家族の言葉が背中を押してくれた面もあります。
親のフォローは? 自己分析する時、自分から見る自分、他から見る自分は違う。良い面、苦手なことなど、自分以上に知っていてくれて、相談して良かったと思いました。

川瀬 東京・大阪の企業も受け、県外就職かUターンか迷っていたとき、「あなたの好きな場所で好きなことをしたらいいよ」と両親が言ってくれたことが印象に残っています。戻ってきてほしいと言われていたら、逆に戻らなかったかも。私の意志を尊重してもらえたことがうれしかったです。Uターンを決めたと伝えると、とても嬉しそうで、そういう表情を見ると帰ってきてよかったと思います。最終的に島根を選んだのは、暮らしやすさや、多くの友人がUターン就職を決めていたことも大きかったですね。
親のフォローは? 電話などで自分の気持ちを聞いてもらったことが大きかった。

伊賀上 就活中も家族には相談していて、母親は「あなたが選んだならどこでもいい」と私の考えを尊重してくれていましたが、島根に就職を決めた後「帰ってきてほしい気持ちは実はあった」と聞かされました。就活中に聞いていたら、もう少し愛媛の企業に目を向けていたかもしれません。
親のフォローは? 受ける会社や業界について親も情報収集してくれて、衣食住に関わる仕事はいつの時代も必要とされていて、食の仕事の意義についても話してくれた。そういう面でもフォローしてもらいました。

倉立 両親が適度な距離を保ってくれたのは非常に助かりました。決して無関心だったわけではなく、相談すれば寄り添ってくれて、「すごい」「頑張れ」という応援の言葉が支えになりました。あまり関与されるとプレッシャーを感じてしまう私の性格を配慮してくれたのだと思います。焦りもありましたが、楽観的にとらえている面もあり、親も同様に前向きに考えてくれて、やりやすかったです。
親のフォローは? 前向きな言葉をかけてもらったのが助かった。ポジティブな言葉に励まされ、力になっていました。

最後にひとこと

保護者&就活を控えた
お子さんたちへメッセージ

雄副 就活は早く動くことで今まで知らなかった業界や企業を知ることができ、自分の世界観や視野が広がり、その経験は今の仕事にも役立っています。就活中は気持ちの上げ下げがあり、家族が声をかけるタイミングは難しいかもしれません。ただ、地元に戻ってきてほしいという思いはきちん伝えることも大事だと思います。島根にはいい企業がたくさんあると伝えてください。

倉立 私はやりたいことが分からなかったが、積極的に動くことで見つけることができました。就活中は本人も家族もドキドキ、ピリピリすると思いますが、そういう空気が家族から伝わってくると不安にもなるので「いつも通り」に過ごして、前向きな言葉で応援してほしいです。いつも通りの家に帰ると、ほっと安心できます。

川瀬 大学時代に学んだことが就職先を考えるきっかけになりました。島根の企業にも若手が挑戦できる機会がたくさんあります。私も「いつも通り」が大切だと思います。家族には干渉されたくない反面、就活中は友人にも相談しづらい雰囲気もあり、親に話を聞いてもらうことで気持ちが楽になりました。学生時代に、親に電話することはほとんどありませんでしたが、就活中はよく電話するようになりました。私の親はとくにアドバイスすることはなく、ただ話を聞いてくれることが多かったですが、それに助けられました。

伊賀上 大学生活を楽しむことでできたつながりで就職したい企業に出会えました。保護者の皆さんが「地元に帰ってきてほしい」という気持ちがあれば、しっかりと伝えてほしい。僕のようにUターンの意識もあった者がIターンになるケースもあります。言いたいことはいろいろあると思いますが、お子さんを信頼して、見守ってほしいと思います。

セミナーに参加された保護者の声

松江市 50代男性

長男が大阪の大学3年生。大学院進学も検討しているので、就職活動はもう少し先になるかもしれません。皆さんの経験談を伺い、干渉し過ぎない方が良さそうだと感じました。好きな仕事に就いてくれることが一番。島根県の企業についての情報収集など、本人がプレッシャーを感じない形でのフォローをしたいと思います。

松江市 50代女性

長男が高専4年生。修業年限5年の後は、現在は県外大学への編入が第一希望のようです。親としては近くにいてほしい思いもありますが、現状では就職も県外を主に考えているよう。(別会場のイベントで)島根にも多様な良い企業がたくさんあることを再認識し、子どもにも知ってほしいと思いました。「島根だから子どもが興味をもてる職場はない」ということもないと感じました。本日のセミナーで指摘された「いつも通り」「過干渉にならない」などを参考に、就活をサポートしていきたいです。